業界ニュース2025

2025年

昨年は脱毛専門サロン・クリニックの大型倒産が相次いだ上、大手脱毛サロンのミュゼプラチナムの騒動のなか年末を迎えました。しかし、エステティックサロンの倒産はあったものの小規模のエステティック業は強く、女性の美意識の高さを実感いたしました。

脱毛専門サロンに関しては今年も注意が必要かと思います。他社の倒産に影響されないように広告の強化やスタッフのフォロー、そしてSNSを使った集客や顧客のフォローをしっかり行うことが必要かと思います。この難局をのりこえましょう。

 

ミュゼプラチナムが社長、役員の退任を発表

2月14日付で脱毛専門サロン「ミュゼプラチナム」の運営会社「株式会社MPH」の代表者や役員の退任が発表しました。理由や今後のことには詳しく触れておらず、不安の声ばかりがSNSに投稿されているようです。

 

「キレイのぜんぶミュゼにまかせて。」これは脱毛サロンを運営するミュゼプラチナムが著名なタレントを起用したプロモーションのキャッチコピーの一つだ。消費者には清廉なイメージのあるミュゼプラチナムだが、その経営の内情は厳しい。

全取締役は解任され、給与の遅配も生じているという同社は過去にも経営危機に陥っており、上場企業からの救済支援を受けた過去がある。そしてそれは、決してキレイごとで割り切れるものではなかった。

 

破産すればカード会社にも甚大な被害が…

先日、「週刊文春」が、大手脱毛サロン「ミュゼプラチナム」の全取締役が2月14日に解任されたことを報じた。2024年12月には当時の社長だった三原孔明氏が東京商工リサーチの取材に応じており、問題とされていた給料の支払い遅延は事実であると認めつつも、インタビューでは資金繰りは回復しており、反転攻勢を目指すと意気込みを語っていた。

三原氏によると、過去の運営会社から株式分割によって「MPH」を設立。分割前の法人が残した社会保険料の滞納については、社会保険庁と見解に相違があったという。MPH側は連帯債務を負わない方法で会社分割をしたと認識していたが、社会保険庁はそうではないという意見だった。

信販会社やクレジット会社の口座に差押えが入り、資金繰りが悪化。支払いの準備はできていたものの、昨年後半に船井電機に関する一連の報道やSNSで誤情報が広がったことを受け、予定していた出資者からの入金が一時滞った。

三原氏はミュゼの運営には〈毎月最低でも15億円くらいの資金が必要であり、12月の資金調達はクリア。グローバルブリッジファンド合同会社が再生支援に入り、資金を調達している〉と説明していた。

 

再建に向けて前向きに進んでいるように見えたが、肝心の三原氏が解任されてしまったというわけだ。再生の道が閉ざされてしまった可能性もあるが、ミュゼが潰れると困る関係者が多いため、簡単に破産申請はできないだろう。

公式ホームぺージによると、ミュゼの会員は430万人以上。毎月1万5000人の新規会員を獲得しているという。一般的な全身脱毛コースは2万2000円だが、実際は数十万円に及ぶケースが多い。ほとんどが前払いで支払っているため、このままだと数百万人の会員がサービスを受けられずに漂流することにもなりかねないのだ。

しかも、支払いにはローンやクレジットカードが使われていることも多く、脱毛サロンが倒産して破産手続きが開始された場合、クレジットカードの利用者は支払いの停止を求める抗弁権を主張することができる。そうなると、カード会社にも影響が及ぶのだ。

 

また、サロン数も全国169店舗と数が多い。従業員数は3360人。もし破産すれば、大量の失業者が発生することにもなる。多くは女性であり、特殊な専門業種のために受け皿もそう多くないはずだ。

 

600億円近い莫大な簿外債務は元の会社に残される

ミュゼが破産危機に陥ったのは実は今回が初めてではない。そして、簡単には潰せないことで「価値の高い会社」になっていたことも事実だ。

2015年10月、当時ミュゼプラチナムを運営していたジンコーポレーションが金融機関との間で任意整理に入っていることが明らかになった。その際に再生スポンサーになったのが、広告事業を手がけていた「RVH」だった。

このときのミュゼプラチナム(ジンコーポレーション)最大の問題点は前受金を全額売上計上していたことだ。2015年11月末時点で587億円あまりが簿外債務となっていた。これが未消化分の前受金である。ジンコーポレーションの2019年3月末時点における純資産は142億円。しかし、実態は400億円を超える債務超過だったというわけだ。

こうした状況の中で、RVHによるM&Aは巧みなものだった。まず、ジンコーポレーションがミュゼプラチナムという新たな会社を設立し、脱毛サロン事業と資産を承継。RVHは235万2000株を新規発行し、株式交換でミュゼプラチナムを完全子会社化した。株式の時価は20億円ほどで、キャッシュアウトを伴わない買収だった。

さらに簿外債務587億円はジンコーポレーションに残された。ミュゼを子会社化したRVHは、ジンコーポレーションの未消化役務を受託契約で実施するというものだった。

つまり、すでに顧客が契約した(前受金)分の施術はジンコーポレーションから受託する形で、新会社ミュゼプラチナムが提供するというものだった。RVHは旧契約者との関係を遮断したのだ。

ただし、RVHは旧契約者にサービスを提供する受託契約を結んだが、施術に対する現金収入は生じない。それがミュゼプラチナムの買収対価の一部であるというものだった。仮にすべてを消化した場合、譲受価額は簿外債務となっていた587億円になるのだ。

しかしこれだけの金額をすべて消化するのは現実的ではない。事実、RVHはその後の2020年に早々とミュゼプラチナムを売却している。

ジンコーポレーション時代のミュゼは、2011年から2014年にかけてトリンドル玲奈氏を起用した大々的なプロモーションを実施し、脱毛サロン業界で圧倒的な人気を獲得していた。再生を図るRVHは脱毛ビジネスの要となる「集客」において、その恩恵を受けられる。しかも、旧契約者はサロン側にとっては次のプランを提案する絶好の相手だ。旧契約者の新規契約は当然、RVHの収入になる。

サロンは固定費が発生しているため、空き時間を活用して未消化役務を行なうというオペレーションも可能だったこともあり、RVHにとってミュゼプラチナムの取得は極めてメリットの大きいものだったのだ。こうしてRVHの美容事業は拡大してゆく。

 

破産したサロンの顧客も抱え込む

2017年4月に「グロワール・ブリエ東京」と「ミスプレミアム」が破産手続きの開始決定を受けた。その際、日本エステティック経営者会が会員救済を目的とし、RVH傘下のミュゼプラチナムに対して救済措置の提案を行なった。ミュゼはこれを受け入れている。

その内容は、支払済みの既存顧客が受けられるはずだったサービス(合計11億円)に対し、35%を乗じた価格で顧客がそれを購入し、ミュゼプラチナムが役務の提供を続けるというものだった。

さらにクレジットカードの信販契約の残債務(合計31億円)に35%を乗じた額の支援金の提供を各信販会社から受け、既存顧客は信販会社に残債務の支払いを継続することで、同じくサービスを提供するというものだ。

こうしてグロワール・ブリエ東京とミスプレミアムの旧契約者はミュゼ全店でサービスが受けられることになり、全国のサロンをフル活用し、既存顧客と新規を含めて収益性を高めようとしたわけだ。

しかし、RVHはコロナ禍が深刻化する前の2020年2月にミュゼプラチナムを、髙野友梨氏が代表を務めるG.Pホールディングに譲渡すると発表し、現在はサロン事業から撤退している。

RVHによるミュゼの買収は悪しざまに言われることも多いが、旧契約者が継続的にサービスを受けられたことや、店舗の大量閉鎖を回避して雇用が守られた点においては見事なものだった。

はたして今のミュゼを救済するスポンサーが現れ、旧契約者や雇用は守られるのか。注目の局面を迎えている。

(引用元:集英社オンライン https://shueisha.online/articles/image/253117 )

 

 

この発表の前週に、三原社長は社員に対して翌週には未払いの給料を払うと説明していたという話です。

新任の阿部博社長も名前だけで誰なのか?大手のファンドとはどこなのか?社名もなく謎が深まるばかり。今後は会長の大島氏が中心となって立て直しを図るようですが……早く落ち着いてほしいですね。

この時点では、1月支払いの給与は6割まで支払われているようです。

 

(2025.1)

 

 

 

 

脱毛専門サロンのクレジットの取り扱いが危機

1月下旬に脱毛専門クリニックの「トイトイトイクリニックが」倒産しました。患者に対しては何も連絡がなかった為、通っている方々は来院時にクリニックのドアの張り紙を初めて知ったようです。

HPも閉じられ、掲載されているのは倒産の案内と弁護士の連絡先だけ。

そして先日「トイトイトイクリニック」と取引をしていた「ネクサスカード」が2月に入り本日より特定継続的役務の取り扱いを停止すると加盟店に通達を出したそうです。ネクサスカードはJトラストグループで、昨年末倒産した「アリシアクリニック」でもJトラストグループの「MIRAI」が取引をしていてその影響もあるのではないかと思われます。ちなみに「MIRAI」もトイトイトイクリニックと取引があったようです。

 

(2025.2)

 

 

ミュゼ役員解任の実態

役員解任に揺れるミュゼプラチナム。国内大手の脱毛専門サロンだけに今後の去就を美容業界や関係する業者が注目しています。そんな中、三原社長が単独インタビューを受け現状を説明しています。

 

脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」の全役員解任の報道を受け、運営会社の三原孔明社長ら幹部が2月17日、東京商工リサーチ(TSR)の単独取材に応じた。

 運営会社や株主がたびたび変更されたミュゼプラチナムは現在、MPH(株)(TSRコード:036547190、東京都港区)が運営している。

 三原社長は昨年12月、TSRの取材に対して、給料などの支払い遅延を認めた上で、「資金繰りは回復しており、今後反転攻勢を目指す」と語っていた。

 MPHの三原社長、惠良司取締役など幹部へのインタビュー内容を詳報する(インタビュー内、敬称略)。

 

―MPHを巡って、「全ての取締役が解任された」と報道されている

2月7日MPHに届いた文書

 

 2月7日、合同会社トラスト(TSRコード:023567023、東村山市)から「経営体制及び今後の運営に関するご連絡」と題する通知書がMPHにFAXで送付された。

 譲渡担保権の実行でMPHの株式を取得し、同日、株主が全員出席して開催された株主総会で取締役全員が解任され、新たな取締役としてA氏を選任したとの内容だった。

 三原は2月10日に従業員に給料遅配の説明会を実施する予定だったが、「説明会の中止に関するご連絡」がトラストの代理人弁護士から届いた。9時半から説明会を開催予定だったが、同日から取締役らは職場に入れなくなり、メールアドレスや入館証も使用できなくなった。

 会社の実印を取得しようと試みたが、僕(三原氏)らは部外者だとして入館できなかった。実印は、MPH本社から持ち去られた金庫の中に入っていたが、第三者からの指示で持ち出されたとすれば窃盗罪に該当すると考えている。

 同日、顧問弁護士から、トラストに対して反論書を送付した。株式の譲渡承認、株主名簿の名義書換とも未了のため、トラストが株主としての権利を行使することはできず、三原らを解任した株主総会は有効性がないと主張した。

 2月12日、トラスト側の弁護士から回答があり、それに対して16日にさらに反論した。

 

―取締役に就任したとされるA氏とは

 合同会社トラストの職務執行者で、今のMPHの自称代表者。私たちは面識がなく、全く知らない人物だ。

 

 

―今回の事態のきっかけは

 本件は、B氏による社内紛争だと考えている。元々、B氏は三原と組んで「ミュゼプラチナム」事業の再生を手掛けていた。

 B氏は、MPHの債権者である会社の経営者保証もしていたが、保証を外したい思惑もあったのではないか。今回の事態の後、B氏と会話はできていない。

 

―「経営体制及び今後の運営に関するご連絡」での「経営陣による不正」とは

 トラストは、レナード(株)(TSRコード:300051093、東京都中央区、三原社長が経営している脱毛機器販売会社)に不正な資金の流失が起きていると主張している。ただ、実際には正式な売買契約書が存在する。

 契約書に基づいて資金をMPHからレナードに支払っているが、それに対して、トラスト側が役員解任の理由にしている。

 

―従業員給料や家賃の支払い状況は

 一部給与の遅延は事実だ。グローバルブリッジファンド合同会社(TSRコード:698497082、千代田区、以下GBF)がミュゼの資金面を対応しているが、内紛が起きている状況で支払いは難しい。

 内紛が落ち着き、私たちが運営権を握れば、給与などの支払いができる見込みだ。

 

トラスト側は譲渡担保権の実行により株式を取得したと主張し、代表印が押された株主名簿もあるとしているが、実際の株主構成はGBFが100,000株(99.01%)、三原が1,000株(0.99%)だ。

 商業登記簿は2月12日現在、三原を代表としている。なお、ストックオプションや登記上本店の移転を申請するため、現在は登記事件中となっている。

 

―今後について

 とにかく一刻も早く状況を安定させることだ。この状況が長引けば顧客の解約や従業員の退職などの影響が出てくる。コールセンターなどの業務も逼迫しており、直ちに改善を進める必要がある。

 私たちはトラスト側と話し合う準備はできている。顧客の為にも早急に話し合いをする必要があると思う。

 

◇     ◇     ◇

 不安定な経営により従業員への給与の遅配などがSNSでも拡散され、「ミュゼプラチナム」の動向は注目されている。

 2月18日、TSRは、トラスト側に取材を申し込んでいる。

 経営権を巡る紛争は、早期に解決されるのか。従業員と顧客が取り残されていることを忘れてはならない。

 

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年2月20日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集より引用)

 

 



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